シューベルトのロザムンデ

シューベルトの即興曲 第3番 D935 OP.142ー3は変奏曲になっていますが、

最初のテーマは「ロザムンデ」のテーマです。

ロザムンデはキプロスの王女で、この王女の物語にシューベルトは劇音楽を作っています。

さらに、弦楽四重奏の13番にもロザムンデのテーマが入っています。

シューベルトは、この「ロザムンデ」のテーマをこよなく愛し、生涯に渡って響かせていたのですね。

 

「キプロスの王女ロザムンデ」の物語は、ロザムンデが2歳の時に父王が死に、貧しい船乗りの未亡人に預けられます。18歳になった時に、ロザムンデの生い立ちを知る市長が、彼女が正当な王位継承者であることを宣言します。

しかし、それまで代理の統治者であった者が、その地位を守るためにロザムンデと結婚しようとしますが、失敗します。結婚できないならばと、ロザムンデを暗殺しようとしますが、それを防いだのがマンフレートという若者で、彼はロザムンデが小さい頃から婚約者に定められていた隣国の王子でした。

そしてロザムンデと王子は結婚します。

 

これは世界の神話や伝説に広く見られる「貴種流離譚」ですね。

もとは高貴な生まれだったものが捨てられて、身分の低いものに養われるが、やがて本来の血筋に復活して、高い身分に戻るというパターンです。

シューベルトは、この貴種流離譚に惹かれていたのでしょうか?

思えば、人間は皆、本来自分の中に高貴な本質を持っているのですから、このような貴種譚は人間の普遍的な物語であるとも言えます。シューベルトはそれを訴えたかったのでしょうか。

シューベルトは音楽家の中でも、大変純粋な魂の持ち主ですからね。

即興曲の3番、ロザムンデのテーマを弾いてみてくださいね。

 

2023年07月21日